希望を尊重し、働きやすい環境を整備
1年でベトナム人6人を採用
支援内容
採用方法のご提案・マッチング機関・専門学校への取りつなぎ支援
業種 | 飲食業(玄米&野菜食堂玄三庵の直営) |
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社名 | 株式会社サニーブランチカンパニー |
住所 | 大阪市中央区淡路町2-1-10ユニ船場210 |
URL | https://genmian.jp/ |
従業員数 | 155名(内、外国人材7名) |
資本金 | 500万円 |

人材紹介

お名前 | ドゥオン オアン (Dương Oanh)さん |
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国籍 | ベトナム |
在留資格 | キッチン |
職種 | 特定技能 |
入社日 | 2024年3月15日 |
入社経路 | 外国人材専門の人材紹介会社 |
「“食事難民”に健康的な食事を」
サニーブランチカンパニーは、玄米&やさい食堂「玄三庵(げんみあん)」を大阪市内で7店舗展開する。日本各地の契約農家から仕入れた有機栽培、減農薬栽培で育てられた玄米や野菜を使って定食や惣菜、スイーツなどを提供。栄養管理士がカロリーや三大栄養素のバランスを監修しており、健康的でおいしいメニューが特に女性客の支持を得ている。
社長の高根三枝さんは、大学生の時に甲状腺疾患を患ったときに主治医の勧めで玄米と野菜を使った食事療法で体調を取り戻すことができた原体験を持つ。その後、就職し、大阪の繁華街のオフィスに勤めたが、周囲に玄米や野菜食を提供する飲食店がないことに不満を覚えた。会社では大きな仕事を任されるようになっていったが「自分の好きなことは何だろうと考えたときに、料理を作ること、人に喜んでもらうことだと考え、飲食店を自分で開いてみようと決めた」とキャリアシフトに踏み切った。
「体に良い食事をしたくてもできない“食事難民”の方に健康的なお食事を届けたい」というコンセプトを掲げ2010年、第1号店を肥後橋にオープン。軌道に乗るまでは時間を要したが、メタボリックシンドロームという言葉が認知され、食の世界に健康というキーワードが持ち込まれてからは追い風が吹き、出店依頼が相次ぐようになった。


ネパール人の採用をきっかけに外国人採用に着手
同社ではスタッフの95%を女性が占める。このため女性が働きやすい環境の整備に努め、早くから1日8時間労働、週休2日制を貫き、採用が難しいとされる飲食業界の中でも比較的安定的に人材の確保ができていた。だが、好況が続いたことで他業界に人材が流れ、望む人材の採用が徐々に難しくなっていく。そこへとどめを刺したのがコロナ禍だ。「短時間営業や休業を余儀なくされ、働く人にとっては不安定な業界というイメージがついてしまいました。飲食業界以外の業種へ転職したいと職場を去っていった人もいました」と当時の状況を振り返る。
先行きの採用に厳しさを感じていた頃、1人のネパール人女性が「玄三庵で働きたい」と訪ねてきた。日本語も英語も堪能で飲食店の経験もあったことから、現場のマネジメントに加えインバウンド客の対応も任せることができた。「非常に熱意があって性格も良く、職場にもすぐになじんでくれました。まさに私たちが求める人材でした」。得難い人材に巡り合えたことで、日本人だけに目を向けるのでなく外国人を採用の選択肢に加えようと考えるようになったという。2022年1月には大阪産業創造館の17階にスペースを借り、全店のセントラルキッチンを兼ねた店舗のオープンを控えていたこともあり、一刻も早く人材を確保する必要に迫られていた。

日本での勤務経験を条件に加え、募集

産創館の経営相談窓口で思いを伝え、大阪外国人材採用支援センターを介してつないでもらったベトナム人の人材紹介会社に採用業務を委託することにした。「熱意を持った人を3名雇用したい」という希望を伝えた。一方で「実際に調理業務に携わってもらうので日本の食文化を理解してくれるかどうか、日本人スタッフともすぐなじんでもらえるかどうかが不安」という思いも率直に伝えたところ、紹介会社から「日本で一度働いた経験を持った人を対象にしてみては」とアドバイスを受けた。飲食料品製造業の特定技能の在留資格で採用を行うべく現地で募集をかけたところ、思いのほか多くの応募があったという。集団面接を経て、3名の採用に至った。
そのうちの1人、オアンさんは以前に1年弱、日本のおにぎり製造会社で卵の検品業務に携わった経験があるという。応募した経緯については「子どもが大学生になったこともあり学費の足しが必要でした。円安が進んでいましたが、以前働いた経験があることで日本での生活に慣れていることもあり、日本の会社を選びました。何より、私自身、料理をすることが大好きです」と話す。
作業表などはすべてひらがな表記に
2024年3月にサニーブランチカンパニーに入社したオアンさんら3人は、産創館17階にある玄三庵の厨房で調理業務に携わっている。会社としては、できるだけ長く働き続けてもらえるように、本人の希望を尊重して勤務シフトを組むようにしている。「オアンさんたちが収入を少しでも増やしたいという思いも理解しています。負荷がかからない程度に休日の出勤もお願いしています」と高根さん。
一方で「日本食のことを知らない外国人に料理をつくってもらうことにはやや不安がありました」とも。そこで、レシピや作業表などについては、すべてひらがな書きにして、早く業務を覚えられるようにした。円滑なコミュニケーションを図るため、当初は翻訳機を使うことも考えていたが、日本語能力が高く、杞憂に終わった。オアンさんも「漢字まで覚えるのは難しいけれど、ひらがなであれば理解できます。わからないことについても皆さんがとてもやさしく教えてくれるので、仕事に早く慣れることができました。日本の料理は細かいところまできれいに見せようとするところがありますがが、私も細かい作業は好き。すべての仕事を覚え、任せられようになりたい」と笑顔を見せながら語る。
「オアンさんをはじめみんな頑張り屋さんで向上心も高く、本当にうちを選んできてくれて感謝しています。調理業務のスタッフさんは、オアンさんにしてみればお母さんのような世代の方が多く、娘のように温かく迎え入れ、かわいがっている様子が感じられ安心しています」と高根さん。
オアンさんのお姉さんも合流
入社した3人のベトナム人のうち1人が個人的な事情でベトナムに帰国せざるを得ず退社したが、その状況を知ってオアンさんが大分県で働いている姉にサニーブランチカンパニーで働くように勧め、入社に至った。「両親が姉妹同じ場所で働いてくれた方が安心と話していたので、姉に、職場は働きやすいし、大阪は住みやすいことも伝えたら、来たいと言ってくれました」とオアンさんもうれしそうだ。
同社では24年11月にも、即戦力として高度な業務につくことのできる在留資格「技術・人文知識・国際業務」でベトナム人を新たに2人採用した。「都心部のお店の中にインバウンドの来店客が2割ほどを占めるようになっているので、通訳としてお願いできる人を採用しました」と高根さん。ベトナム人社員が増えてきたこともあり、今後はベトナム人同士が情報交換できるコミュニティがあればより安心して生活できると思うので、そんな場づくりも考えていこうと思っています」と高根さん。そう話す横でオアンさんも優しい表情でうなずいていた。
取材日:2024.11