海外支援業務の強化を見据え
アフガニスタン人技術者を採用
支援内容
インターンシップのご提案・専門機関への取りつなぎ支援
業種 | 水道事業 |
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社名 | 株式会社大阪水道総合サービス |
住所 | 大阪市阿倍野区旭町1-2-7 あべのメディックス1106号 |
URL | https://www.owgs.co.jp/ |
従業員数 | 390名(内、外国人材1名) |
資本金 | 8,500万円 |

人材紹介

お名前 | モハマディ モハマドガルさん |
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国籍 | アフガニスタン |
在留資格 | 技術・人文知識・国際業務 |
職種 | 技術職 |
入社日 | 2024年4月1日 |
入社経路 | JICA課題別研修の見学の際に当社に興味を持ち、その後JICAインターンシップ・プログラムに参加の末、入社の意向があり正社員採用に進んだ。 |
「海外事業を担う若手人材を確保したい」
株式会社大阪水道総合サービスは、その前身となる財団法人が1969年に大阪市水道局の監理団体として設立され、2008年に大阪市が100%出資してできた会社です。水源から蛇口に至るまでのトータルの水道システムを支える事業を手がけており、具体的には浄水場の運転管理、維持管理といった水を作るところから、水道施設や管路施設の工事監督、水道メーターの検針、水道料金等の収納業務までを担っています。「官の目線で、安全、安心な水道ライフラインの構築に注力しているところが当社の強みです」と企画推進室企画調整担当課長代理の向井勝久さん。

同社では大阪市水道局と連携し「大阪水道グループ」を構成しており、近年は双方が持つ技術力・ノウハウを生かし大阪市以外の周辺事業体の技術支援のほか、ベトナムやインドネシアなど上水道に係るシステムが未成熟な開発途上国の水道事業体が抱える課題の解決にも貢献しています。特に水道インフラの整備がまだ進んでいない開発途上国には海外貢献の機会があると考えており、直近では24年3月に採択されたJICA草の根技術協力事業の「インドネシア共和国ジャンビ市水道施設管理能力向上プロジェクト」への参画が決まっています。
ただ同社ではそうしたプロジェクトにかかわる人材が足りていないことを課題として挙げます。「経験を積んだベテランの人材については充実しているのですが、今後を考えた場合、若手の人材を獲得、育成していく必要があります」と松本広司社長。さらに海外展開を強化していくためには外国語に長けた人材の確保が欠かせないと考え、外国人人材の採用についても検討を進めてきました。
「日本の企業で実務を経験したい」という思いに応える
同社ではこれまでJICA関西が開発途上国向けに実施している水道分野の研修事業に協力してきました。この研修は、日本が有する知識や経験を通じて途上国が抱える課題解決に資するよう取り組んでいるもので、毎年6月頃に約1カ月の期間、海外から水道技術者を招いて実習を交えた研修や水道施設の見学などを行っています。23年度の研修では海外から招いた受講者に加え、JICAの支援で日本に留学している長期研修員もこの研修プログラムを見学する機会を設けました。
見学をした長期研修員の中で同社に関心を持ってくれたのが後に同社に就職することになるガルさんでした。ガルさんはアフガニスタンの農村復興開発省で水道施設の設計業務などに従事し、2021年から立命館大学大学院に長期研修員として留学していました。ガルさんは「日本で最先端の水道技術を学ぶだけでなく、日本の企業で実務を経験したいと考えていました」と思いを語ります。
インターンシップを活用し、現場の雰囲気を肌で感じてもらう

ただ、同社にとっては初めての外国人採用となるため、「受け入れるにあたっての手続きや段取りがわからないこと、また実際に働くことになる現場も含め会社全体の理解を得る必要があること、という二つの課題がありました」と向井さん。
大阪外国人材採用支援センターの担当者に相談すると「まずはご本人に現場の雰囲気を知ってもらうとともに、受け入れ側の社員にも心がまえを持ってもらえるよう、インターンシップを実施してはどうか」との提案を受け、10月に実施することにしました。
インターンシップでは、ガルさんを採用した場合の勤務地として想定していた和泉市の水道施設の職場を案内し、日々の業務内容や機器類の操作方法などを説明するとともに、そこで働く従業員ともコミュニケーションを図りました。ガルさんは日常会話レベルの日本語についてはある程度習得していたため、通訳は付けずに済んだといいます。「一番心配していたのは現場の従業員とのコミュニケーションでしたが、ガルさん自身、学ぼうとする姿勢が強く、説明する側も片言の英語と身ぶり手ぶりを交えながら伝えようとする姿を見てこれはうまくいくなと感じました」と企画推進室企画調整担当課長の小沢宏至さんは語ります。

年が明け、インターンシップの後の役員との面接試験では、ガルさんにアフガニスタン政府で取り組んできたことやそこで得たスキル、日本で取り組んでみたいことなどについてプレゼンをしてもらいました。「日本で頑張ろうとする思いが伝わってきました。これからの海外展開にも貢献をいただけると判断し、正式に採用を決めました」と松本社長。
伝え方を知るために「やさしい日本語講座」を受講
ガルさんの入社が決まってからは、小沢さんと向井さんが中心となり外国人受け入れの準備を進めました。まず、ガルさんの住まい探しからサポートに当たりました。また、ガルさんはイスラム教徒であることから、勤務地のお祈りのスペースを確保したほか、社内の関係部署に対しては、イスラム教ならではの配慮(食事面やしきたり等)には十分留意することを伝えました。またガルさんとのコミュニケーションをより円滑にするために、大阪外国人材採用支援センターから紹介を受けた「やさしい日本語講座」の研修を受講しました。「なるべくわかりやすい日本語を使うことはもちろんのこと、つい省略しがちな主語、述語を明確にして話すことや、問いかける際には一つずつ確認することを心掛けてほしいと社員に伝えました」と向井さん。
在留資格については、2024年4月の入社時点でガルさんは「特定活動」の在留資格でしたが、その期限が切れる時期に合わせて、大学で学んだ専門的な技術や知識を生かせる業務に従事できる「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格へ登録変更を行い、5年間の在留期間が認められました。
いずれは海外支援業務の中核人材に

現在、ガルさんは和泉市水道施設監視運転操作業務に従事し、主に浄水工程の水質の分析業務に携わっています。「同僚の皆さんはとてもやさしく、コミュニケーションもしっかりととれており、良いチームワークを発揮できています」とガルさんは柔和な表情で語ります。業務については日本語のマニュアルを母国語に変換し、わからない言葉については調べるなど勉強熱心で周囲にも良い影響を与えているとのこと。「ガルさんとは定期的に面会していますが日本語が日に日に上手になっているのには驚かされます」と向井さん。
「いずれは当社の海外支援業務に携わってほしいと思っています。当社で長く働いて頂き、来日した研修員等に知識等を提供することによりアフガニスタンに貢献するとともに同国との太いパイプにより、新たなビジネスチャンスにもつながることも期待しています」と松本社長。
また、社員の英語スキルをアップするためのサポートもしてもらえたらありがたいとも話します。今後の外国人採用については、海外事業の推移などを見極めながら考えていくとのことで、「今後もインターンシップなどを行いながら当社にふさわしい人材を採用していきたい」と今後を見据えています。
取材日:2024.10