事例紹介

製造業技術人文知識国際業務

エンジニアの半数弱はベトナム人社員!
長年の採用経験を生かし直接採用へ

支援内容

申請手続き支援

業種製造業(プロダクトデザイン・筐体設計・3Dプリント・デザインモデル・ワーキングモデル・部品加工・各種表面処理)
社名株式会社エムトピア
住所大阪府東大阪市荒本西3丁目2−33
URLhttps://www.emtopia.com/
従業員数94名(内、外国人材20名)
資本金2,000万円

人材紹介

お名前ズォン アイン ザーンさん
国籍ベトナム
在留資格技術人文知識国際業務
職種製造技術
入社日2008年4月1日
入社経路人材紹介会社からの紹介

家電などの工業用試作品を製作

エムトピアは、家電などの製品を量産する前に、デザインの見映えは良いか、機能をしっかりと発揮できるか、使いやすいかなどをあらかじめ調べるための工業用試作品を作る会社です。「かつては外観のデザインを確かめるための模型が中心だったのですが、最近では、扇風機であればモーターもつけて風の具合がどうかという機能的な面までチェックできるよう完成品に近い試作品を作っています。また、製品をつくるための型である金型も作っています」と、総務課課長の福山佳延さんは事業内容について語ります。
製作プロセスとしては、顧客のアイデアや仕様、デザインデータをもとに必要があれば設計から行い、データに変換し、マシニングセンターなどの工作機械や3Dプリンターなどを使って模型を作っていきます。現在は、本社のある大阪と横浜、そしてベトナムに工場があり、国内外で約200人の社員が働いています。

20人のベトナム人エンジニアが活躍

エムトピアの外国人採用の歴史は古く、2006年11月にベトナム工場を開設する以前から工場の製造担当者としてベトナム人を研修生として採用していました。「日本人の採用が難しくなってきたこともあり、早くからベトナム人の採用には取り組んできました。ただ、当時は日本で3年の研修を終えた後には本国へ戻らなければいけなかったので、せっかく仕事を覚えた頃に辞めてしまわれるのが大変だったと聞いています」と福山さん。
企画開発部設計課課長のズォン・アィン・ザーンさんは2008年6月の入社で、エンジニアとしてはベトナム人では2人目の採用でした。「当時はベトナムに日本の企業の仕事を仲介する会社があって、そこにエムトピアからの募集があり、応募しました。大学で設計を勉強し、たまたま4年生の時に日本語を勉強する機会があったので応募してみようと思いました」とザーンさん。以来、同社では現在に至るまで少しずつベトナム人エンジニアの採用を増やし、現在は20人を数え、同社のエンジニア全体の半数弱を占めるまでになっています。

ベトナム社員のコミュニティを通じて採用

ベトナム人エンジニアの採用に関しては、人材仲介会社を通して行ってきましたが、福山さんは2023年頃から、「以前に比べて、採用したベトナム人の定着率が低くなっている」ことが気になっていました。「せっかく費用をかけて採用にこぎつけても短期間で辞められてしまうことが続き、他に採用できる方法がないかと考え、自社の社員のネットワークを活用してみることにしました」。
ザーンさんたちベトナム人は、ベトナム人同士で日本企業の採用について情報を交換すし合うSNSのコミュニティに参加しており、そこでエムトピアがプログラマーを募集している旨情報を書き込んだところ、社員の親せきや知り合いなど4名のベトナム人から応募したいと手が挙がりました。現地で面接を行い、4人の中から1人を選んで内定を出しました。「皆さんプログラマーとしての経験者ばかりだったので、大学の時の成績や、どんなCADを使っているのかなどを聞き、当社の仕事にすぐになじんでいただけそうな人を選びました」と福山さん。

▲総務課 課長 福山佳延さん

申請手続きのアドバイスを受け、自力で書類を作成

▲企画開発部 設計課 課長 ズォン アイン ザーンさん

ただ、これまでは採用を仲介会社任せにしてきただけに、いざ直接採用するとなるとどのような手続きがあってどのような書類をつくって申請しなければならないのかわかりませんでした。行政書士に頼ることもできましたが、自力での書類作成を目指しました。そこで頼ったのが、大阪外国人材採用支援センターでした。
採用するには、入国管理局に、各種申請書類だけでなく、在留資格を満たしているかをしっかりと説明する理由書を付ける必要があることを知りました。「特に理由書については、入管にしっかりと当社の採用の意図を伝えなければならず、今回、技・人・国の在留資格で採用するにあたってどのような点に注意して書くべきかのアドバイスも受けることができました。実際に書いてみると大変だったので、アドバイスがなければとても書くことはできなかったと思います」と福山さん。結果的に何の問題もなく入管から許可が下りたそうです。
ただし、入管に書類を提出してから許可が下りるまでには数カ月の時間を要するとのこと。エムトピアではその期間を活用して、ベトナム工場で仕事に慣れてもらう時間に充てています。「ベトナム工場には日本で使っているのと同じ設備、機械があるのでその使い方などを学んでもらい、日本に来てからすぐにスムーズに仕事に溶け込めるようにしています」とザーンさん。

20人働いているという安心感が次の雇用を生む

エムトピアに入社したベトナム人の多くはいったん入社すると長い期間働く人が多く、現在は本社の設計課の課長をザーンさんが、プログラム課の課長もベトナム人社員がそれぞれ務めています。近年は、ベトナム人を採用したいと考える日本企業が増え、以前よりもベトナム人を採用するハードルがかなり上がっているのが実態ですが、エムトピアの場合、ザーンさんたちがSNSで呼び掛けることで数人の応募が必ずあるそうです。
ザーンさんはその理由について「ベトナム人がすでにこの会社で20人も働いているというのは大きな安心感につながっていると思います。実際にどのような仕事をしているのか、日本での生活はどうなのかについても社員からあらかじめ情報が得られる点も後押しになっているのではないでしょうか」と語ります。
ザーンさんが籍を置く設計課の課員2人は40代、50代で、長い目で見た時に次の世代を育てていく必要に迫られていました。そこで、2025年1月、あらためてザーンさんを通してSNSに呼び掛けてもらい、応募した人の中からねらい通り2名の20代のベトナム人の内定を決めることができました。今回も申請書類手続きは福山さんが担当し、現在は申請の許可が下りるのを待っている状態だそうです。「前回はプログラマーで今回は設計担当者の採用でしたが、1度申請手続きを経験しているので難しくはありませんでした。今回はほとんど自力で作成し、センターの担当者の方に一度チェックしていただいただけで済みました」と話します。
現在も、横浜の工場の人員が不足しているためベトナム人を採用して補うことを考えているとのこと。「今後も随時必要が生じた時には、同じようにベトナム人の採用を続けていきたいと考えています」。長年、着実にベトナム人採用に取り組んできた経験をもとに、直接採用に生かした好事例と言えるでしょう。